生まれて初めての海外旅行。
　生まれて初めての飛行機。
　安定飛行に入ってまもなく、食事が配膳され始めた。もちろん、生まれて初めての機内食。どうやら二種類のメニューがあるらしい。
　キャセイパシフィックのきれいなスチュワーデスさんが私のところにやってきて、にこやかにこう聞いた。

　「ビーフ、オアチカン？」

　はあ？
　ビーフが牛肉っていうのはわかる。しかし、ちかん？チカンって、なんだ？そんな単語、聞いたことないぞ。

　首をひねっている私に、スチュワーデス嬢、パーな小学生に教えるように、「チカン、チカン」と連発してくれるのだが、さっぱりわからない。
　前にも書いたが、私は肉が嫌いである。したがって、ビーフは避けたい。しかし、チカンなるものを頼んで、とんでもない代物が出てきたら……

　しかし、回りの客をいつまでも待たせるわけにはいかないので、もういいよ、それで、とわけのわからないまま頷いた。
　そして、出てきた料理を見れば……
　なんのことはない、鶏肉、すなわち「チキン」だった。

　日本の英語教育が悪いのか、それとも香港英語がなまっているのか。
　チキンもわからないで、こいつ、この先大丈夫かい、と思われただろうな。トホホ……。